帝都東京・隠された地下網の秘密 (新潮文庫)
学生の頃,南北線の永田町駅周辺は通学で使っていたのだが,あの辺り通るときにいつも不思議な分岐があるのが気になっていた。何しろこの前まで正式名称が「帝都高速度交通営団」という大日本帝国の亡霊みたいな名前*1だったし,国会議事堂周辺のトンネルの噂もチラホラ聞いており,そういう地下鉄にまつわる謎の全てが解けるんじゃないかと期待して読んでみた。
(この先ちょっと変更)
地図の「改描」や町名の変更,境界線よる暗号化の話などは,非常に興味深かった。この本に書かれている以上は国防上,つまびらかに出来ないのかも知れない。情報や推論にはとても感激したけど,文章のレベル感か,あるいは語り口か,話題の展開か,情報の細かさか,問題の切り口か,うまくはいえないけど,ノンフィクション作品としてみた時に,そこらへんに不均一感があって,読み心地が悪かった。その辺りをひとひねりすれば名著なのに,と少し残念。本の厚さは二倍になってもしっかりと書き切って欲しかった。
この違和感は実は意図的に仕組まれたもので,本書の中に既に,隠されたメッセージが埋め込まれてるとか,そんな話だったら面白い。
正直,今更戦前に張り巡らされた地下鉄の本数が何本だったとか,そういう秘密を暴くメリットはそんなにないと思う(隠すメリットはあるかも知れない)。そして私はそれが国家機密だと聞いても納得できるのだが,でも隠されているから見てみたいというもう少し高レベル(低レベル?)な欲求から,探求してみたい気持に駆られた。
一般人が利用する地下の壁一枚隔てた向こうの話,というところがとてもスリリングだ。
- 作者: 秋庭俊
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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ちなみに,地図に思いを馳せて東京を巡るなら,中沢新一の「アースダイバー」もお勧め。こちらは縄文地図。これはまだ読み終わっていないので読み終わったらまた感想書きます。
- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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