空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

宮本武蔵・読後感

吉川英治「宮本武蔵」を読み終わる。宍戸梅軒とは七巻で再度闘った。お杉のおばば,又八,そして朱実の片付き方は「これでいいのか?」と納得できないものが残ろう。奈良井の大蔵の一味であった城太郎の立場はどうなのかとかも気になる。お通に降り掛かる災難も,吉岡一門との一条下り松の戦いから,徐々にマンネリ化してきて「この女に救いはない」と読めてしまった。結局,清水の三年坂を含めれば,二度殺され,最後は病気という扱いになってしまった。前半,魅力的な人物であっただけに,個人的には残念でならない。
沢庵和尚も,本質的な役割は,七宝寺で武蔵を野生から目覚めさせるところで尽きていて,あとはウィザードとして,物語のつじつま合わせに利用されていた感がある。
物語の最後で,おばばが何故救われたのか,理解する必要があると思う。単なる表面的な恨みの範囲では,おばばは死んでしかるべきである。それなのに,それを許してしまう心はどこからくるのか。そこには「年寄りをいたわる」以上の深いものがあって,興味深い。
前半,中盤は,「武士道」「わびさび」「無常感」など,日本人の心に訴えるメッセージ大と思えたが,後半は私の読書疲れもあったためか,精彩を欠いていたように感じた。ただ,面白かった。
そういえば「バガボンド」は今,どうなっているのだろう。