空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

The Carpenters

BS1でカーペンターズの特集をやっていた。
カーペンターズというと,70年代〜80年代にもかかわらず,どちらかというと印象はもっと「古い」とか「地味」というイメージが強かった。不運なことに当時はロック全盛時期であり,レコード会社も当然,時流に乗ったアーティストのプロモーションに力を入れ,カーペンターズのプロモーションにやる気が無かったこと,そしてマネージメントの失敗から,スターとしての成功とは裏腹に彼らの生活がボロボロになっていったことを知り,人の生の儚さに思いを馳せる。また,その時々の思いの一つ一つが楽曲に込められていることを知り,改めて彼らの曲を一つ一つ聴きたくなってしまった。一人の女性としての幸せを望んだカレンが一番好んだ曲の一つが「I Need To Be in Love」…。切ない。
その中に面白いエピソードがあった。僕の一番好きなTOP OF THE WORLDの歌詞

Such a feelin's comin' over me
There is wonder in most everything I see
Not a cloud in the sky
Got the sun in my eyes
And I won't be surprised if it's a dream

Everything I want the world to be
Is now coming true especially for me
And the reason is clear
 :

対訳は以下のようになる

なんてすてきな気分なのかしら
見るものすべてが驚きよ
大空には雲ひとつなく
目にはお日さまが映るだけ
これが夢でも 全然驚かないわ

私が望んでいたものが全部
今 私のために特別に
叶えられようとしている
 :

恋愛ソングという商業的な都合上,これは大切な人に出会えた喜びを歌ったものとしてまとめられているが,実はこの歌,カーペンターズがアーティストとして成功を収め,プライベートジェットで世界を渡り歩く中で「まるで自分たちは世界の頂点にいるみたい」と語り合ったことが元になっているとのことである。そんなエピソードを思い浮かべながら改めて歌詞を読んでみると,なんとも色鮮やかに情景が思い浮かんでくる。

プライベートジェットが離陸し,自分たちだけを乗せて,空に向かって一直線に飛び立っていく。
「これが夢でも 全然驚かない」ような素晴らしい体験。
想像するだけでため息が出てしまいませんか。

プライベートジェットという装置はかくも人間を「偉くなった」気にさせる装置であるらしい。ペンポイントコンピュータで有名なジェリーカプラン氏の自伝「シリコンバレー・アドベンチャー―ザ・起業物語」にもプライベートジェットに触れた記述があったのを思い出す(この本の主題とは関係ないけど)。
シリコンバレー・アドベンチャー―ザ・起業物語
比較にならないくらい,小さな張り合いだけど,僕が大学に入学して初めてバイクに乗ったときの気持ちも正にそれだった。バイクもある意味「オレだけの装置」だしね。しかし相変わらず地面すれすれを,地を這うように飛んでいる自分。そろそろレシプロでもいいから大空を飛びたいものだ。