空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

雨の影

雨の影 (ヴィレッジブックス)

雨の影 (ヴィレッジブックス)

前作「雨の牙」に引き続き、長らく書架で眠っていた本。前作に較べるとずっと完成度が高くて読み易い。「盗聴器探知機」という控えめな小道具が、要所でいい働きをする。相変わらず主人公は殺しまくる。戦う敵も怖い。まさにサスペンス。

この二作の背景にある日本の腐敗した部分の告発と、それに色と香を添える都市の緻密な描写がお気に入り。東京電力原発のずさんな管理体制を批判する下りでは、2004年の時点でフクシマの事故が起こるべくして起こることを予見していて、今読み直すと残念でならない。著者の幻想的な都市の描写は、しばらく日本を離れ、今となっては幻想になりつつある私個人の東京の記憶と重なり、余計に引き込まれた。