空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

「日本辺境論 (新潮新書)」を読んだ

内田樹(たつる、と読むんですね)先生の「日本辺境論 (新潮新書)」を読んだ。面白かったので紹介。

日本人に刷り込まれている価値観や考え方が、中国を世界の中心とする地政学的な辺境性からある程度説明がついて、辺境という一つのキーワードから、日本人の気質をあれこれ説明することができるという話。

学問的な重要性や厳密な細かい議論はその道の人に譲るとして、実践的な理論としては、日本人をそれ以外の国の人と比べた際の特徴をうまく説明できている。実感としてなかなか正しいことが導き出されている。

今まで言語化したことはなかったけど、僕はかねがね日本人の気質というのは、心の奥底に染み付いたある種の貧しさのようなものと切っても切り話せないと思っていた。物質的な資源に乏しいというのもそうだし、精神的にも、何か欠けたところがある。それがマクロにみた日本人のアイデンティティを形成していると感じていたが、それはただの概念的なものに過ぎなかった。そこにつながる部分を、本書は「辺境」という地理的な(物理的な)性質を根拠にして、史実を引き合いに出して説明している。僕にとっては新鮮であり、目から鱗が落ちる箇所がいくつもあった。

蛇足だけど、そろそろ中国にGDPで追い抜かれようとしている今「辺境」というキーワードは、誤解も含めて、意外と人々に意識されるようになるんじゃないかと思ったりする。日本がもしかしたら文字通りの辺境になっちゃうかも知れないからねぇ。

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)