空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

LAX-NRT-BKK (3)

7年前に来たバンコクとどれくらい変化があるのか興味があったので,ホテルでタクシーを呼びバンコクの中心部に言ってみる。相変わらず渋滞はひどいけれど,Sky Train と呼ばれるモノレールが一部完成したのと,それに伴ってか,町の空気は多少はきれいになっていた気がする。以前は排気ガス臭かった記憶がある。

あと2年もすると国際空港からバンコクまでのモノレールが開通するらしい。交通の便はグッと良くなるだろう。また5年後くらいに来てみようと思った。

その人は,70km 北の田舎から出て来て,バンコクで仕事を探したけど Taxi の運転手くらいしか仕事がないんだそうな。当然,田舎にも仕事はなかったらしい。ようは,そんなに高等な教育を受けていない人だと思われるが,それでも英語は十分話せるところが,すごい。いやむしろ,日本人は本当に英語が下手なんだなぁと実感した。

しかし観光案内については,あまりネタを持ち合わせていなかったようで,あそこの薮は蛇が多いから気をつけろとか,あまり役に立たないことを教えてくれた。

どっかで,その国の景気を知りたかったら,Taxi の運転手に聞くのが一番よい,と読んだことがあったので,景気の話も聞いてみた。「going up going up, my salary is going up」だそうである。

政治の話を聞いてみると(これはどのタイ人に聞いてもそうなのだが)けっこう渋い顔をする。前首相の贈収賄について表面的な批判をした後,軍事政権を支持していることを表明する。どっちがよかったかと聞いても「わからん」としか答えない。これは私の偏見かも知れないけど,何か自由に話すことができない事情があるのだろうか。

話の弾みでつい,うっかり「これから空港に戻らなければならない」と言ってしまう。

言ってから,ああしまったと思った。というのも,タクシーの運ちゃんにとっては願ってもない 長距離な客なわけで「この客は逃さん」という雰囲気がモリモリと立ち上る。で,市内のデパートが集まる場所で下ろしてもらおうと思ったら,何故か,有料パーキングに金を払って停車し(!)「俺がここで待ってるから,ここでの用事が終わったら戻って来てよ,荷物は見ててあげる,金も後でいい」などという。

タクシーの運転手は有料パーキングに40THB投資(どーせ私が払わなければならない,糞!)してしまったから,後には引けないだろう。荷物はトランクの中なので,そこから脱出するには,けっこう厳しいことを言わなければ行けない。さてどうするか。ヨシここは,大人の対応をば。というわけで…。

それまでの話で,この人は真面目にタクシーの運転手をやらないと生活できない(=生きていけない)し,悪いことを考えるほどのずる賢さもないことが分かっていたので,まずは相手の運転免許証と営業許可証と車のナンバーを確認し,全て覚えた(フリをした)。

海外旅行の保険には入っているから,万が一何か盗まれても,保障の範囲内だ。などなど諸々のリスクを考えた結果「わかった,じゃあ13:00にまた戻ってくる」と伝えて,そのオファーに乗っかる。当然,旅を続けるためのもの全てはバックパックに背負って。

昼飯は 35THB の汁そばをいただく。韓国料理は赤い割に大して辛くないのに対し,本場のタイ料理は,大して赤くないのに猛烈に辛い。一人で泣きながらそれをいただいた。恐らく,以前は炉端でやっていた屋台をかき集めてデパート内に移しただけのフードコートだったけど,味はかなり良かった。

土産物屋にはあまり興味がなかったし,大抵のものは下北沢にでも行けば売っていそうなものばかりだったのでスルーする。けっきょく 35THB しか使わなかった。

駐車場に戻ると,タクシーの運ちゃんはしっかり待っていてくれた(当たり前だ,まだ金払ってないからな)。しかし,メーターは消えていた。なるほど,これからは運ちゃんも違法モードか…と思って,表面的な会話を楽しみながら,その後の作戦を練った。

メータが消える前の運賃は 225THB だったのを覚えていたので,それをベースに,時間と距離と,メータの増加量の関係を概算。空港までの運賃を追加すると,だいたい 350 THB になることが分かった。そうすると駐車場代を払っても,まあ 400THB が妥当なところだが,私の計算誤差で,低く見積もっていたら,ほんとうに怒りそうだったので,なかなかそのオファーも難しい。この時点で妥当な線で円満な解決は望めないかな,などと思う。

案の定,タクシーの運ちゃんは 700THB をふっかけて来た。適正値の約2倍,まあ良心的なふっかけ方である(空港到着直後の白タクは6倍だった!)。おまけに 500THB 以下の細かいお金を持っていなかったので「100THBの釣りを出させる」ためには,さらなる説教が必要そうに思えた。

長期戦で後腐れが悪くなっても行けない。何より観光地先で気分を害するのが一番いけない。お互い楽しい時間を過ごせたことに感謝して,さりとて,ありのままの横暴を野放しには出来ないと思って,ここは,一気に畳み掛けることにした。「私は本当の価格がいくらか知っています。駐車場代と運賃を併せて,400THBが妥当ですが,荷物を預かってくれたことと,あなたの親切に感謝してこれだけ払います。これ以上は払いません。」といって説得力のある風に500THB紙幣を渡した。

最初は「プリーズプリーズ」とだだをこねていた運転手も,もう一度「分かったね?」と言ったら,最後にはニコニコして「いいよ分かったよ。サンキュ。」と言ってスッキリ終わらせることができた。

町中ををスーツケースなしでうろうろ出来たのはよかったので,駐車場代はよしとしよう。それを考えると,本日の勉強代は100THB(300円)か。タイは2度目なので手口は分かってたつもりだけど,チビチビとかすめ取られる。

BKK からさらに AirAsia に乗って UTH(Udon-Thani)に飛行。いよいよ今回の目的地に到着だ。