空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

ほんとうは日本に憧れる中国人 「反日感情」の深層分析 (PHP新書)

ほんとうは日本に憧れる中国人 「反日感情」の深層分析 (PHP新書)

ほんとうは日本に憧れる中国人 「反日感情」の深層分析 (PHP新書)

主題と副題が逆? イヤ,タイトルは完全な釣り文句だな,釣られるものか!と思いながらも,騙されて読んでみる。中国の若者が持つ日本観の二重性*1について書かれてたけど,僕自身も中国観には二重性がある。歴史上の中国は偉大だけど,現代の中国はどうしてこう,大人げないことを繰り返すのか,みたいなところ*2。・・・ともかく,近くて遠い大国中国について知りたくて読んでみた。

一章,二章は中国国内に日本の文化がいかに浸透しているかが書かれていたが,残念ながら著者の個人体験に基づく話が多く,客観的なデータは少ない。また他国文化の浸透との比較も少なく,説得力に欠けるものがあったと思う。実際のところはどうなのか,やはり分からない。

三章以降,ようやく「深層分析」に入っていく。

中国人,韓国人が,戦後 60 年以上経った今でも,未だに反日感情を燻らせている背景には,儒教の精神が,日本のように書物で取り入れた理屈ではなく,人々の生活に根付いていることがあるとのこと。そういう彼らから見ると,過去を「水に流して」しまう日本人は,反省していないように見えたり,傲慢であるように見えるようだ。

また,政府によって情報が統制されている彼らにとっては「マスコミ → 政府」という認識が強く,日本の一報道機関がニュースとして取り上げた出来事も,あたかも日本政府の動向であるかのように受け止めてしまう傾向があるとのことである。

その考えが,良いか悪いかではなく「そういう人々である」という前提から,理解することを始めなければならないようである。なかなか興味深い。

ここから先は,一寸,思ったこと。歴史認識を持つことは大切だと思うが,その際,思うのは

  • 歴史は自国の都合がいいよう部分的に捏造されうる。既にお互い捏造された基盤上にいるため,根本修復は不可能
  • 事実を分かち合うのではなくて,認識の違う両者を認めあうしかない
  • 良いところを見習う姿勢を持たなければならない
  • 冷静な分析は必要だが,妬み,恨み,憎しみを伝える必要性はない
  • 妬み,恨み,憎しみは,いとも簡単に人の心に芽生えてしまうので,歴史認識の際に,それらに対するケアを十分やらないのであれば,相互理解には逆効果である

ってこと。この本の内容がどこまで信用に足るものであるかは,実際の中国人に聞いてみないと分からないが,一部報道から伝わってくるヒステリックな反日国家というよりも,思ったよりも冷静な視点を持っているような雰囲気は伝わってきた。

*1:日本製品は好きだけど日本は嫌い,みたいな

*2:負けから学べることを学んでいないというか