空想犬猫記

※当日記では、犬も猫も空想も扱っておりません。(旧・エト記)

主権在米経済 The Greatest Contributor to U.S. (光文社ペーパーバックス)

主権在米経済 The Greatest Contributor to U.S. (光文社ペーパーバックス)

主権在米経済 The Greatest Contributor to U.S. (光文社ペーパーバックス)


アメリカに住み始めてから半年と半月が経つ。すっかりこの国に愛着が湧いたと同時に,自然に日米関係にも興味を持ち始めている。小林興起さんも,通産相時代にアメリカ留学経験があるらしい。立ち読みで済ませるつもりだったが,本書で語られている「アメリカ」という国に対するイメージが,僕が感じたそれにとても似ていて,「何か面白いことが書いてあるかも」と思い,ついつい買ってしまった。本書の後半に

初めて見たのはアメリカのメインランド。その広大さ,そして,その豊かさに私は圧倒された。なぜこんなにすごい国を相手に日本は戦争をしたのか?なぜ,そこまで追い込まれてしまったのか?戦争を回避する外交というのはなかったのか?ともかく私はそんなことばかり考えるようになり,最終的に,こんな豊かな国を相手に戦争をするなんて,なんてバカげたことを日本はやったのか,そんなことは決して考えるべきではない,と痛感した。

とあって,これはまさに私が最近強く感じていることと同じだったからだ。それが分かってて,なんでこんな怪しいタイトルをつけたんだろう,そのミスマッチが,少しだけ興味をそそった。

で,感想なんだけど,なかなか言っていることは素晴らしいのだけど,全体の半分くらいしか共感できなかった。ああ,旧タイプの政治家なんだなぁとしみじみ思った次第。よくも悪くも,偏った意見が詰まった本なので,余り政治に詳しくない人(たとえば私のような)が本書を手に取って「うんうん,そうだよなぁ」と納得していたとしたら「アブない」と思う。
前半の「郵政解散の舞台裏」についての恨みつらみは読むに耐えない。挙げ句の果てに,自分の思うようにならない人たちのことをゴミとかバカとか言って,思考停止してしまってるような面も見受けられた。時流に乗り遅れたオジさんが「バカも休み休み言え」と繰り返す背中を想像すると,哀愁を感じる。Chapter 4 から 6 までで「日本 3 大バカの壁」と称して「マスコミ」「政治家」「官僚」を挙げているけど,客観的にみて,このストーリを完結させるには第 4 のバカとして「国民」も入れとかないと,最も強大な力を持つ主権者たる国民に対して失礼じゃないかと思う。真剣にそう思う。各々の章に書かれていることそれ自体は興味深かった。
限られたルールを最大限に活用して法案と通過させることや,マーケティングに基づく選挙で大勝することを善しとするか悪しとするか,私は善いに決まってると思うタチなので,それについて小泉内閣を批判するのはおかしいと思った。ゴリ押しで通した件については逆に,そういう相手に対して何の防護策も立てられなかった間抜けな政治家には,今後,重要な案件は任せることは出来ないなと思った。選挙についての批判も,例えば「小泉劇場の虜になったアフォな無党派層にガッカリしたよ」とか書けば,もう少し納得したかも。ついでに言ってしまうと,選挙戦における新党日本の絶望的なダサさについても,ご本人は真剣に考察されたのかどうか気になるところ。まずは,カメラの前で「新党ー日本ー!」というパフォーマンスをやることを考案した選挙参謀が,自民党執行部の手先であるかどうかを疑ってみて欲しい。
年次改革要望書に関する脊髄反射的な危機意識も,余り共感できない。選挙に落選したただの人がいうならともかく,仮に一国を背負う政治家が,そんな分かり易い反応をしたら,僕はそれこそ母国を憂いて夜も眠れないかもしれない。
郵貯のお金が民間に渡って,投資に回ると,たちまち海外にお金が流れていく。という話も,詳しい説明がなく,短絡的な話で読者を納得させようという魂胆に腹が立つ。仮にコバちゃんの脳内ロジックでそうなるんだとしても,もう少し明確な説明が必要だと思った。まぁ,大体いわんとすることは補完したつもり。
さんざん言い散らかしたものの,この本を読んで,小林興起という人を,まずは知ることができて,その生き様に多少なりとも影響を受け,興味を持ち,普通の政治家よりは断然応援したくなったということは,なきにしもあらず